向日性

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違う視点を持とう~山下陽光「バイトやめる学校」感想

1:一読して思ったこと

年とったらどうするの?(体動かなくなったらどうするの? あと、クリエイティブ系の人は50過ぎたらどうするの? )

P.59 「『途中でやめる』は夫婦で月収20万円を超えないようにしてて」
子供いるんだから貯金して!! 夫婦で月収40万とかにして!! すでに周りに言われまくっててなお、何か考えがあってやってるんだろうけど…。

P.66 「ピンポイントはうれしい」
これからの時代はマスの威力が弱まって、小さいコミュニティーに複数属する世界になっていくんだと思う(もうすでに半分なってるかも)。
で、大体の人は複数のコミュニティーに属してるだけだろうけど、その小さい山のトップの人達は大変だろうなぁ。時間の確保が。
小さいコミュニティーの単位は上限が150人くらいって昔岡田斗司夫が言ってて、でも150人と差しでつきあうって大変。時間がいくらあっても足りない。で、トップの人は何かを作る人(文章書いたり、もの作ったり、絵描いたり、音楽したり、企画したり)だろうから、それをするためにはまとまった孤独な時間が必要じゃん。どうするんだろ? 
でもやるんだよ、ってことなのかな。やる前にケチ付けてんじゃねぇよ、ってことなのかな。


2:関連書籍の感想(自分で勝手に設定)
松本哉「貧乏人の逆襲!増補版」(ちくま文庫
この本から私が受け取ったメッセージは「世の中で“普通”とされてることを疑え」。この本で一番重要な箇所は、
P.14 「『社会のために苦労して頑張る→世の中が栄える→そのおこぼれを頂戴する』生き方ってのは、金持ち連中の口車に乗せられているか、よほど優秀な奴隷。ウソウソ、やめたほうがいい。散々苦労させられたあげくに、最後にスズメの涙ほどの小遣いでももらう程度だ。

 それに対し『好きなことをやる→困ったことが起こる→もめる→何とかなる(何とかする)』という考え方だったら、世の中の成り立ちとしても生き方としても普通。それにこっちの方がどれだけ人間らしく楽しいか。」

これは「バイトやめる学校」でも同じことを言ってるなぁ。

「バイトやめる学校」の感想が書けない~ということで、皆に倣って赤ペン引いて読み直してみた。14ページにはページ全部に赤線が引かれた。

「やりたくない仕事をして、空いた時間に好きなことをやるのは効率が悪いし、体にもよくない。ストレス溜まりまくって、発散しようとお金を使いまくって落ち込んだりするのはまだいいほうで(中略)
 でもそれってダサい。いや、ダサいことにしていきたい。
 ダサくてウケる。そもそもカネがいまだに流行っているのってウケる。
 もう資本主義終わるとかいわれてますが、終わるまっただなかにいる僕らにしてみたらまだ終わってない。だったらとにかく、お金をダメにしない方法を発明して、生活できることをやっていこう!」

松本さんと山下さん、二人ともまっとうだなぁ。

この前職場で研修会があり、見せられたビデオに登場してた人が「私の会社員人生では~」と言ってて、引っかかったんだよな。会社員人生、か。そんな言葉がこの世の中には存在するのか。山下さん側か会社員人生側かっていったら今私、会社員人生側だよな。しかも最底辺の(派遣で就業中なので)。ちゃんと肚決めて会社員人生側にいることを決めるのもありだと思うけど、最悪なのは肚決めずにダラダラ今の状態でいることだよな。

上田惣子「マンガ 自営業の老後」文響社
立ち読みした。この本から私が受け取ったメッセージは「もうフリーになっちゃった人はしょうがないけど、まだフリーになってない人はフリーになるな! 公務員最強!! 」。「バイトやめる学校」とは真逆の立ち位置の本。ちなみに作者は53歳。


3:やっぱり岡田斗司夫と似てる
鞆の津ミュージアム主催の坂口恭平さんとの対談(2014年1月26日)で「お二人の活動って岡田斗司夫さんが提唱してる“評価経済社会”と似てると思うんですがいかがですか? 」と質問した際、お二人の回答は「似てるとか言うなや」(意訳)だったが、うーん今山下さんがやってることってかつて岡田斗司夫が辿った道に似てるんだよなぁ…っていうとものすごく嫌だろうけど。

例1、メール交換
岡田は2001年ごろ、本出した後に読者とメール交換やってた。たしか単行本「フロン」の後ろのほうに「興味ある人は誰でもメールください」みたいな案内が載ってた記憶がある。あとツイッターで結構長い間、自己紹介欄に「フォローミーとつぶやいてくれればフォローします」と書かれてた(今は書かれてない)。

例2、プチクリ、才能埋蔵マップ
岡田が2005年に出した「プチクリ 好き=才能!」(幻冬舎)という本がある。プチクリとは岡田の造語でプチ・クリエイターの略。本の内容を簡単に説明すると「何かが好きってことはその何かに才能があるってことなんだよ。才能の見つけ方は簡単。できるだけ大きい紙を用意して、自分の好きなこと、興味あることを書き出してみる。書式は自由。そしたら、その書き出したもので“表現できること”に丸をつけていく。あとはもうやるだけ! 例えば、甘いものが好きで、コンビニスイーツはマメにチェックするという人がいたら、今すぐ“コンビニスイーツ評論家”と名乗ろう。評論家なんて、そんな大層なものじゃないし…って尻込みしない! こういうのは言ったもん勝ち!!」みたいなことが書いてある。

2014年に山下さんと坂口さんに質問して答えてもらった後に私が思ったのは「戦後70年経って、既存のシステムにはガタがきている。聡い人たちはいち早く次のやり方を模索してて、その一人が岡田さんや山下さんや坂口さんだったりするのだろう」ということ。

あと最近

「ゲンロンカフェ完全ガイド」2014年7月号(コメ有) 

http://www.nicovideo.jp/watch/1404398929

つうのを見て(最近の言論人は大変だなー、3年前の発言なんて一番聞かれたくないだろうに)、あずまんが「これからのビジネスモデルは診断メーカー(アフィリエイト)か深見東州(カルト)しかない」と突如言い出す(143:20辺り/273:05)のだが、その意は「グローバリズムの世界で今後生き残っていけるビジネスモデルはアフィリエイトかカルトかしかないのではないか。アフィリエイトとカルトの間にオールドメディアがあるが、その運命は先細りなのは目に見えている。アフィリエイトもカルトもビジネスモデルとして危険だしダメなのは言うまでもない。問題は、そのどちらかのビジネスモデルを採用して、その中で良いコンテンツをどう作るか、面白く世界に役立つことをどうやるかしかない」ということだそうだ。
だから岡田斗司夫と山下さんが似てるというよりは、新しい時代の生き方を模索すれば自然似てくるということなんだろう。


4:さいごに
本書14ページの他に、103ページの田中君(仮名)の言葉もほぼ赤線が引かれた。
「ピンチになったとしても、未経験から行動するには時間がかかる。時間があるうちに、その準備体操をしておいたほうがいい。後ろ向きなきっかけにはなりますが、そういうものかもしれません。おもしろかったり、ちゃんと儲かるなど、きっかけが前向きなやつだったら、みんな進んでやってると思います。」
私が文章を書き始めたきっかけは後ろ向きなものなので、そういうものだよな、と思った。

 

追記

正直、このサイズ感で1,400円て高くね? って思った。

1,000円~1,200円だったら納得できるんだけど…。「シリーズ3/4」って言っておいて、値段は3/4じゃないんだな。ファンとしては、山下さんの初めての単著を出してくれたありがたい出版社なんだけど…。

って思ってたんだが、公式が本文中で「読み終わったこの本をメルカリで売るのが、バイトやめる学校の第一歩」(P.132)って言ってて、もうそういう次元ではないな、と思った。

しかも実際、メルカリではほぼ定価で売れて、書き込みがあったほうがいい、っていう人もいるらしい!!