上京するのかしないのか

今年の2月に上京した。

それまでは、10歳まで兵庫県西宮市、高校卒業まで宮崎県宮崎市で育ち、大学から今年の2月まで広島県広島市にいた。
 
高校の時は東京に憧れは無く、働き始めてから東京に行きたくなった。東日本大震災を挟んで結局10年くらい悩んだ。
 
 
仕事と住まいを同時に変えるってハードル高すぎる。
 
それにいろんな人が言うんだよね、「なんで東京に行くの?」って。
理由がないと行っちゃダメなのかな? 就職とか結婚くらいの固い理由がないと、最初は楽しくても5年後くらいに泣くことになったりするのか?
文化の中心地で生活してみたいじゃダメ?
でもベネズエラジンバブエに行こうってんじゃないんだよ? 700キロくらい、東にずれるだけじゃん。
 
インターネットの発達と震災を境に、ゆっくりと東京中心は崩れていくような気がするけど、少なくとも私が生きている間は日本で一番の文化の中心って東京だろうし。
 
でもしっかりした目的意識もなく上京したら東京病(行きたいイベントや買いたいモノがありすぎて、自分の甲斐性を超えちゃうこと)にかかっちゃいそうだよな。
 
つうか長い間考えすぎたせいで、手段が目的化してるよなー。
 
 
去年の10月に会社から突然「社員寮、来年の1月で閉めるから」って言われた。
そこから「今行かないときっと一生行かないな。そしたら死ぬ時後悔するな」と思った。
考えてみたら今の自分には金もない仕事もない男もない家族もない、つうことは失うものは何もないじゃん、と思い上京することにした。
 
 
悩んでは思考停止する日々の中、折にふれ、以下の2冊を読み返していた。
 
橋本治(杉並区出身)「ぬえの名前」(1993年)P.174より抜粋
 二年ばかし前に京都へ行って、恐ろしいことを聞いた。『京都は既に大阪のベッドタウンに成り下がった』っていうの。みんな大阪まで通勤してるって。近代都市文明をを憎悪する千年の都にしてみれば、“産業”とか“会社”なんてものはどうでもよいものかもしれないけど、就労人口を吸収できない文化都市って、そのまんま郊外のベッドタウンだもんな。それならいいけど、しかし『京都が大阪のサイタマになった』なんていう表現を使ったら、誇り高い京都の人間は、烈火の如く怒ると思うけどなァ。でも、既に奈良は、“大阪のサイタマ”でしょう?
 
橋本治「ぼくらの東京物語 貧乏は正しい!シリーズ」(1996年)P.147より抜粋

 大阪は、環状線の中を南北に貫く『御堂筋』というメイン・ストリートがあるけれども、東京にはそういうものがない。大阪のキタからミナミまでは歩いて行けるけれども、東京の山手線の南北あるいは東西を歩くというのは、『ちょっとやめた方がいいでしょう』という距離だ。大阪というのは、1道1都2府43県の中で一番面積の小さいところだ。でもだからといって、それで『キタとミナミが歩いて行ける距離』だというわけじゃない。こういう距離は、『都市の小ささ』を表すものではなくて、『都市のモデラートな(手頃な)大きさ』を表すものだ。どういうことかというと、都会というも のは、大体『端から端まで歩いて行ける』というのが、その基本だから。
 パリだってロンドンだって、ベルリンだって、あるいは北京だってソウルだって京都だって、みんな町の規模は大阪とおんなじようなものですよ。キタとミナミと二つの盛り場があって、その二つの間が大きなメインストリートでつながれている大阪は、都市としてはとてもノーマルな大きさだということね。都市というものはそういうもので、『端から端まで歩いて行けないような都市』というのは、異常な都市なんだ。それが19世紀までの常識。つまり、東京は20世紀になって発達した異常な都市だということね。

 端から端まで歩いて行ける大きさが『都市のノーマルな大きさ』で、それが『19世紀までの常識』だというのはど ういうことかというと、この時代まで、人間は『自動車』というものを持たなかったから。
 
 
 
東京に来てから思うのが、
「なんでこんな坂ばっかのとこに街造ったの東急!?(渋谷)」
「(夜の7時くらいにちょっとした裏道をでかいネズーが堂々と走ってるの見て)旧約聖書のソドムとゴモラってきっとこんなんだったんだろうな(渋谷)」
「(皇居を挟んで)東側のビルの建ち方って整然としてるけど、西側のはなんかゴチャっとしてるなぁ」
駅から5分っつっても、駅のホームから目的地までが一仕事感あるんですけど!?」
「世界に名だたる大都市なのに、新宿から広がる放射状の鉄道間って連絡悪くない!?」
とか「大都会ゆえの不便」に日々びっくりしてる。
ま、でも「旅行じゃなくて住みたい」って思ってたのって、こういうことを実感したかったからだろう。
 
いいことも悪いことも、この1年で感じたことをできるだけたくさん言葉にできればと思う。