向日性

Twitter @kojitsusei

「涼宮ハルヒの消失」は失敗作か?

SFファンの知り合いができたら聞いてみたいことがあって、映画「涼宮ハルヒの消失」のあるシーンについてだ。
 
クライマックスのシーンに納得いかなくて、面白かったけど、この作品って失敗作なんじゃないのかと思ったりしている。
ちなみに私はSFの素養がなく、ラノベ(というか小説)を読む習慣がない。
あとこの作品群を初めて見たのが2014年なので、流行っていた当時のアニメ誌や批評誌には当たれていない(「消失」は2010年公開)。
 
【クライマックスのシーン】(134分辺り/162分)
キョンが朝倉に刺される→意識が朦朧とする中、未来の自分の声が聞こえる→意識を失う→目が覚めると消失世界ではなく元の世界に戻っていた、というくだり。
 
「消失」は受け身だったキョンが主体的にSOS団の一員であることを選ぶ話だ。
だったら、意識を失う前のキョンがどうにかしないといけないのではないか。
宇宙人の朝倉に凡人のキョンがどうすればいいんだ、と言われれば何も思いつかないが、未来の自分が過去に戻って始末付けました、凶刃に倒れるのは既定事項です、って言われても、どうにも納得いかない。
原作も読んだが、納得できなかった。
このシーンは演出、脚本的に失敗の部類に入るのだろうか。
SFの素養があれば、この時間遡行オチは納得できるのか? 私にしてみたら夢オチ見させられたくらいなんだけど…。
 
 
 
2016年9月5日・6日にロフトプラスワンエストで行われた「『鬼才 五社英雄の生涯』刊行記念イベント 大地&太一のホロ酔い演出講座2DAYS!!」に行って、二人にそれぞれ聞いてみた。
 
大地丙太郎監督(「消失」は見てないそうだ)
「最終回とかは、さっきの『真田丸』を語る春日さんじゃないけど、自分の妄想が入っちゃうから、違うと許せなくなるからね~」
 
 
(質問の語尾に食い気味に)「僕の新刊(『鬼才 五社英雄の生涯』)読みましたか?」
 
——さっきイベントの休憩時間に買って、まだ読んでないです。
 
「じゃあ名取裕子のエピソードを読んでください。そこに僕の言いたいこと書いてます。名取裕子が『吉原炎上』で五社英雄に詰め寄るんだ。ヒロインの行動に納得いきませんって。でも辻褄なんかどうだっていいんですよ。映画ってそういうもの。辻褄が合っていなかったりする。辻褄を合わすのがお客さんの役割だから。
すてきなことじゃないですか、ずーっと一つの映画について考えるって、それだけ心に残ってるってことです。素晴らしい作品と会えたってことですよ。」
 
 
 
  
お二人に質問する前に、自分なりの答えを考えてはいた。
 「ベストではなく、ベター」なんじゃないか。
 谷川流の気持ちになってみた時、キョンを元の世界に戻す前に、ストーリー上にもう一つ障壁があったほうがいいと考えたんじゃないかな。
 
長門と言えば朝倉→朝倉にもう一度襲われるってどうだろう→おっ、なかなかいい考え→でもどうやってキョンに解決させよう?→時間遡行で解決できるな→いやでもそれじゃ夢オチって言われるんじゃ?→じゃあ読者の予想通り、キョン長門に短針銃撃って終わりにする?→いやでもそれじゃつまんないじゃん?→でも普通人のキョンが宇宙人の朝倉とまともに戦って勝てるわけないし、他にいい手を思いつかないなぁ…→これはどっちを取るかだな。何事もなく長門に再修正プログラムを打ち込んでキョンを元の世界に戻すか、夢オチって言われるかもだけど朝倉と戦わせるか…
 
って作者が考えたかは分からないが、勝手にこう考えてみた。
 
物語のプロである大地監督と春日さんに聞いたら答えが出るかなと思い大阪まで行ってみたけど、面白かったけど、スッキリはしなかった。
正解はないんだから、自分の答えは自分で見つけるしかないんだよなぁ、というすげえ当たり前の結論で。
 
私は物語が書けないけど、こういう想像を積み重ねることが作劇の訓練になるのかなぁ、なんて思った。