曖昧な背景~「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」展感想
久しぶりの晴れ間、今日は東京都写真美術館に行った。
美術館へ行くのも久しぶりだ。
正午ごろ入場したので、ゆったりと観賞することができた。
(帰るころには入場規制がかかっていた。)
一番印象に残った展示は、土器。
エレン・フライス(現在はフランス南西部の田舎町に住む)と前田征紀(京都北部の里山を拠点とする)のコラボレーション展示の部屋は、暗室みたいに真っ暗だった。
その空間に入ったら、土器があった。
個人的に古墳が好きなのと、参加しているオープンチャットの話題で最近「土器」があったので、タイムリーというか、まさかここで土器に会うとは。
作者は安田都乃。
信楽(滋賀県)の土と西都原(さいとばる・宮崎県)の土で作られた、2019年製の土器。
触感を想像してみる。
土器を見ながら、部屋のあちら側でスライドが映されてるなと思っていた。
目の端に写る感じで、前田さんが撮った里山の風景なのかなと思ってたら、近づいたらフライスさんが今住んでるフランス南西部の田舎町の様子(2019年)だった。
人物が映れば外国人だと分かるが、霧にけぶる遠景や農作業している風景、窯を焼いてる風景は日本の農村のようにも見える。
あと古い写真に見えるような処理をしていることが(撮影技術? プリント技術? 投影技術? 全部?)、地域性をより曖昧にしている。
第1展示(アンダース・エドストローム)と第2展示(髙橋恭司)は白い部屋で、第3展示(エレン・フライス×前田征紀)は黒い部屋。
そこを抜けると第4展示のホンマタカシ×PUGMENT(パグメント)の世界が一気に広がる。
この動画の左右に写真(ホンマタカシ撮影)が展示してある。
下の写真は動画、展示写真の順。
動画だと、後ろの看板の文字(“沖縄ドレスメーカー女学院”)が読めるが、写真だと文字が読めない。
写真は人物にピントが合っているから?
なんというか、動画と写真では目が違うんだなと思った。
こちらも動画、展示写真の順。
このモデル、電柱のところでかっこいいポージングをしていたが(私の写真では押さえられていないが)、展示写真では外したようなショットで面白かった。
服がバチバチなので、生活感ある小物(ペットボトルや紙パック)がやけに目立つ。
私がファッションが分からない人間だから、周辺に目が行くだけなのかもしれないが。
たまたま動画に映り込んだオヤジ、かっこいい。
ホンマタカシの出品作品は全て2019年の沖縄で撮影されている。
ただ、作品をパッと見た感じは「渋谷かな? 」と思った。「ホンマタカシ」からの思い込みとか、写っているものが路地裏の駐車場とかだからなのかもしれない。
この背景の曖昧な感じは、髙橋恭司の展示にも通じる。
18枚の展示作品のほとんどは90年代の渋谷近辺で撮られたというが、匿名性の高い風景ばかりだ。
ファッションを写すということは、基本的に服を着た人物にフォーカスするものだから、そしたら背景は自然ぼやけていく、というだけ?
それとも、髙橋-フライス-ホンマの展示に通底する背景の曖昧さは、展示者側のコントロールによるものなのだろうか。
PUGMENTの展示も抽象性が高いので、全体を通して地域性・時代性共に曖昧な背景、というのが印象に残った。
PUGMENTの展示、左からSCRAP、IMAGE、MY CLOTHESのコンセプトが並ぶ。
さらっと書いてるけど、大変じゃない?
【材料】
何らかの理由で路上に落ちている衣服
落ちていた服とできるだけ同じ形をした衣服
最終展示は資料が並ぶ。
来場者が皆おしゃれだった。