大月隆寛講演会「『懲戒解雇』以後-野の民俗学、再び」感想
一週間前にこのような案内を見かけ、行ってみた。
このご時勢に開催してくれて、とてもありがたい。
今年6月に起きた不当解雇についての説明が、ご自身よりなされた。
以前、氏の授業が受けられないか、札幌国際大学の社会人講座や交通手段を調べたことがあった。よりにもよってこのような内容をかぶりつきで聴く日が来るとは。
「おかしいことがあった時、1人だと難しいけど、3人が肚くくって現場で声を上げれば抵抗できる」と仰っていたのが印象に残った。
また、当該大学に勤務するきっかけが公募だったと知り、意外だった。てっきり招かれて、競馬への思いから縁のない土地に行かれたと思っていたので。
「自分の身の丈に合った大学だと思っていた。僕が教えられることがいっぱいある、とそれなりにきちっとやっていたはずなんですけれども」と仰っていた。
会がお開きになり、自然と列ができた。
私は厚かましくも本2冊にサインをもらい、ツーショットまで撮ってもらった。
更には、打ち上げに潜り込み、参加者のご厚意で隣に座らせてもらった。なんという僥倖。
サイン会での私のはしゃぎっぷりからか、打ち上げ会場に向かう道中や席に着いてから複数回、「大月さんのどこが好きなのか」と聞かれた。
「言葉に体重乗ってるから」と答えた。
「セリフに体重乗ってるね」、BSマンガ夜話「真説ザ・ワールド・イズ・マイン」回からの孫引き。
初めて知ったのは、高校生か大学生の時。対談相手目当てで読んだ「地獄で仏」(文藝春秋)。
大学生の時からVHSテープに標準録画して繰り返し見た「BSマンガ夜話」。こちとらシフト勤務の接客業、一ヶ月切ってから発表になることが多かった公開収録に、何度も足を運んだ。2007年11月28日放送の「真説ザ・ワールド・イズ・マイン」回、「大月の目」コーナーで「今“格差”とか何とか言ってますけども、今の我々の貧乏は食べられない貧乏じゃないんだけども、こういう具合に狭い空間にうっかりと100円ショップで買ったものが増えていくような、そういう貧しさなんですね。それを貧しさと言っていいのか分かんないんだけども」(25分13秒/55分。コーナー開始は21分55秒頃より)というくだりに震えた28歳。
不惑で迎えた今回のコロナ騒動、急激な管理社会化にどう対峙するのかという議論が巻き起こる中、「地獄で仏」第3章「オウムの暴走は人類に対する犯罪である」(1995年6月)、「オウム事件、『東スポ』が地味に見えた」(同7月)を読み返した。
青年期に受けた影響は、きっと残り続ける。何かあるたびに私は「地獄で仏」を紐解いたり、「BSマンガ夜話」を見返したりするのだろう。
「義を見てせざるは勇無きなり」の心で面倒くさい役どころを引き受けてくださった方にこんなことを言うのは水を差す行為かもしれないが、こんな素晴らしい知性を裁判でいろいろ消耗させるのはもったいない、と正直思う。
私に出来ることといえば、読者でいること、だ。
裁判の早期解決を願いながら、著書やブログ、ネット上のアーカイブを読み返す。きっとそれだけでも、わずかながら力になれるはずだ。